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伊娃的誘惑

2015年10月02日

話をするこ


 赤松修左衛門は時間をかけ、家臣の二男三男のなかから、適当な人物をえらび出した。勘定奉行だけあって、人を見る目はある。それをむこ養子にした。
 その青年は養子となるとともに、修吾と名が変った。やがて、赤松家の家督を相続すれば、その代々の名、修左衛門を襲名することになる。そして、勘定奉行の職をつげることも確実だった。
 家老とちがって、勘定奉行は世襲の地位ではない。しかし、修左衛門は気に入った養子のため、その対策をおこたらなかった。修吾を補佐役である勘定頭のひとりとして出仕できるように工作し、実現した。普通だと、家督をつがない限りお城への出勤はできないのだが、そこが
修左衛門の実力だった。
 これは、わが娘のためであり、赤松家のためであり、ひいては藩のためでもある。
 修吾はともにお城へ出仕し、公的な仕事の見習いをした。また帰宅すると、公用の席では口にできない裏面の|秘《ひ》|訣《けつ》も教えられた。城下の大商人が、ごきげんうかがいに屋敷へやってくると、修左衛門は彼を同席させ、紹介した。
「これがわたしのあととりです。いろいろと教育しているところだ。よろしくたのむ」
「こちらこそ、なにぶんよろしく。お奉行さまのように物わかりのいいかたになっていただけると、ありがたいのですが……」
 意味ありげに笑う商人に、修左衛門は言う。
「そう仕上げるよう修業させている。なかなかみどころのあるやつだよ。おまえたちも、なんとか手伝ってくれ」
「わかっておりますとも。そうときまったら、いかがでしょう。これから一杯……」
 商人に案内され、料理屋へ出かけて豪遊することにもなるのだった。商人は武士にとって別人種といっていいほどのちがいがあるが、その操縦術をしだいに身につけ、修吾もなかなかのやり手に成長していった。
 藩政の責任者である城代家老が、勘定奉行の部屋に来て、こんなともある。
「江戸の殿から、またも金がいるとの使いがあった」
「なんとかいたしましょう」
「いつもの報告だと、やりくりが大変だということだが、どうなのだ」
「必要な経費とあらば、それを調達するのが勘定奉行の仕事でございます」
 修左衛門は家老たちに、この仕事が容易ならざるものだと、それとなく毎回ふきこんでいるのだ。城代家老はうなずく。
「そうであろう。わたしなど、数字を聞くだけで頭がおかしくなってくる。これだけの藩だ。財政は複雑きわまるものであろう。それが、なんとか運営できているというのも、修左衛門がいるからこそだ」
「おそれ入ります」
「しかし、気になってならぬ点がある。貴殿もかなりの年齢になってきた。出仕できなくなったら、あとはどうなるのだ」
「そのことはご心配なく。修吾をみっちり仕込んでおります。やがては、いくらかお役に立つようになりましょう」
「それを聞いて安心した。武芸の達人は多いが、財政の達人はえがたいからな。しかし、いまのところ貴殿にかわりうる人物はいないのだ。からだに注意し、できるだけいまの仕事をつづけてくれ」

Posted by 伊娃的誘惑 at 16:17│Comments(0)
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